県議活動報告

2023年6月

一般質問 高次脳機能障がい 支援と理解促進、県に要望

坪田

改めて、おはようございます。初めて登壇させていただきます、民主県政クラブ県議団、博多区選出の坪田晋です。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、通告に従いまして、まず初めに高次脳機能障がいとその支援に関して知事にお聞きします。

高次脳機能障がいは、事故や病気などによって脳が部分的に損傷されたために、記憶、注意、思考、行為、学習、言語など、損傷を受けた脳の部位によって様々な症状が現れます。成人における発症の原因は脳卒中などの脳血管障がいが多く、一方、子供は交通事故や転落などによる脳外傷が原因になることが多いと言われています。誰にでも起こり得るこの高次脳機能障がいは、外見上では医師でも診断が難しく、見えない障がいとも言われています。

そこで一点目に、高次脳機能障がいに対する知事の認識をお聞かせください。また、県内の高次脳機能障がいの方の人数について、どのように把握されているかお示しください。

先日、高次脳機能障がいの方にお話を伺いました。就業中にくも膜下出血にて救急搬送され、手術は成功したことで、ふだんの生活に戻って問題ないと指示を受けたが、職場復帰後に新しいことが覚えられない、強い疲労感などにより退職せざるを得ないこととなり、後日、高次脳機能障がいが原因であることが判明いたしました。

職場復帰前に御本人または御家族や職場が高次脳機能障がいが起こり得るリスクを知っていれば、適切に復職できたのではないかと悔やまれます。

高次脳機能障がいは、入院中に目立った症状などがなければ医療スタッフに見落とされやすいと言われており、気づかれずに退院してしまうケースがあります。また御本人も受傷前と受傷後の変化に気づけないこともあり、御家族など周囲の方々への情報提供は早期発見に有益だと考えます。空振りはあっても、何よりも知る機会の確保が必要です。

また、就学中のお子さんがいらっしゃる御家族より、子供の脳損傷後、一命を取り留めた喜びはつかの間で、子供のために高次脳機能障がいを周囲へ理解していただく闘いが始まった、相談できる場所にたどり着くまでに非常に時間を要したと伺いました。受傷前後の変化に周囲の子供たちが戸惑い、時にいじめに遭うこともあります。お子さんの学年が変わるたびに、本県で作成しているリーフレットを使用して、担任の先生や関係者にお渡しすることで高次脳機能障がいを理解いただくようお願いしているともお聞きしました。

そこで二点目に、本県の高次脳機能障がい者への支援の取組状況をお示しください。また早期発見、早期リハビリテーションにつながるよう、患者やその御家族、関係機関などに周知を徹底するとともに、例えば発達障がいや認知症との違いを追加するなど、より分かりやすいリーフレットに改訂してはいかがでしょうか。知事の見解をお聞きします。

高次脳機能障がいは精神障がいに含まれ、障がい福祉サービスを利用できるようにはなっていますが、統合失調症や鬱病等の精神障がいと、その特性と必要とされる支援が異なります。発達障害者支援法は二〇〇五年、医療的ケア児支援法は二〇二一年に施行されており、高次脳機能障がいの方とその御家族らを中心に個別法の制定を強く望まれています。

三点目に、高次脳機能障がいの方とその御家族へ、よりきめ細やかな支援を行うためにも、高次脳機能障がいを支援する個別法の制定について全国知事会などを通じて国へ働きかけを行うべきではないでしょうか。知事のお考えをお聞きします。

次に、公共交通機関のバリアフリー化の推進について知事にお聞きします。

先日、国から示された第五次障害者基本計画において、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを継承するとして、公共交通機関や施設のバリアフリー化を推進するとしています。共生社会を実現するためには、障がいのある方が自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加し、その能力を最大限発揮し自己実現できるように支援するとともに、障がいのある方の社会参加を制約する社会的障壁の除去にさらに努めていくことが必要だと考えます。

私は今日まで障がい者スポーツの普及と発展の一翼を担ってまいりました。競技に参加するために車椅子で移動するだけでも困難でありながら、競技で使用する器具を運ぶには大きく迂回を強いられることもあり、移動に多くの時間と労力を費やし、時には大会や練習への参加を断念せざるを得ないこともございます。

障がいのある方にとって、公共交通機関は社会参加に欠かせない大変重要なインフラとなっています。バリアフリー化が進むことで福岡県の将来の発展を支える社会基盤の整備につながり、知事の目指す、誰もが住み慣れたところで働く、長く元気に暮らす、子供を安心して産み育てることができる地域づくりも進むのではないかと考えます。

そこで一点目に、県内公共交通事業者のバリアフリー化の推進に対して、本県ではどのような支援を行っているのか、お伺いします。

二点目に、民間事業者に対しても、負担が重過ぎない範囲で求められる合理的配慮を義務づける改正障害者差別解消法が来年四月に施行されます。あわせて、公共交通事業者に対して、合理的配慮の理解の促進に向け、どのような取組を進めているのかお尋ねします。

以上、御答弁よろしくお願いいたします。

知事

御答弁を申し上げます。

まず、高次脳機能障がいに対する認識についてお尋ねがございました。

高次脳機能障がいは、脳血管障がいなどの病気や交通事故などによりまして、脳が損傷を受けることで生じる障がいでございまして、記憶障がいや注意障がいなどのために日常生活に大きな支障をもたらすものでございます。

また、議員もおっしゃっておられましたが、身体的、精神的な特徴が外見上では判断しづらいため障がいの状態を周囲に理解していただけず、本人や御家族が大きな負担を抱えている場合も少なくございません。このため、本人や御家族が相談しやすい環境を整備するとともに、障がいを早期に発見し、早期にリハビリにつなげ、日常生活を支援することが必要であると認識をいたしております。

厚生労働省が平成二十八年に行いました生活のしづらさなどに関する調査によりますと、医師から高次脳機能障がいと診断された方は全国では三十二万七千人と推計されております。この推計を基に本県の人口に当てはめますと、本県の高次脳機能障がいの方の数は約一万三千人と推計されるところでございます。

次に、高次脳機能障がい者への支援の取組とさらなる理解の促進についてでございます。

県では福岡市立心身障がい福祉センターなど県内四か所の支援拠点機関を指定しておりまして、それぞれに相談支援コーディネーターを配置し、高次脳機能障がいの方やその御家族からの相談に対応しているところでございます。毎年二千六百件程度の相談がございまして、その内容に応じまして、医療機関あるいは障がい者支援施設等との調整、リハビリテーションや就労支援など、高次脳機能障がいの方の社会復帰に向けた支援に取り組んでいるところでございます。

また、病気や事故によって脳に損傷を受けた方やその御家族に対しまして、将来的に高次脳機能障がいとなる可能性があることを周知し理解していただくことは、障がいの早期発見、早期リハビリにつながるものでございまして、非常に重要でございます。このため、県では一般の方向けの講演会や支援機関向けの専門研修会の開催などを通じまして、高次脳機能障がいに関する理解の促進を図りますとともに、障がいの主な症状などを分かりやすくまとめたリーフレットを急性期あるいは回復期の医療機関等に配布し、患者の方への説明の際などに活用していただくよう促してきたところでございます。高次脳機能障がいの症状は発達障がいや認知症と類似していることもございますため、このリーフレットにその違いを盛り込むなど、内容をより充実させてまいります。

高次脳機能障がいを支援する個別法についてでございます。

高次脳機能障がいを持った方やその御家族の団体におきましては、障がいを支援する個別の法律の制定を求める声があることは承知をいたしております。現在、県では障害者総合支援法に基づきまして支援に取り組んでいるところでございますが、ほかに必要な支援がないか、そのために個別の法律が必要であるかなどにつきまして、支援拠点機関や学識経験者、団体等の意見を伺ってまいります。

次に、公共交通事業者のバリアフリー化の推進についてお尋ねがございました。

県では、高齢者や障がいのある方をはじめ誰もが安心して快適に移動できますよう、交通事業者が行うバスやタクシーのバリアフリー化を支援しております。

バスにつきましては、床面が低く、乗降しやすい低床バスを導入する事業者に対し、その車両減価償却費を助成しておりまして、昨年三月に策定いたしました福岡県交通ビジョン二〇二二におきましては、令和七年度に低床バスの導入率を九〇%とする等の目標を掲げ、普及を図っております。

タクシーにつきましては、乗降口や車内が広く、車椅子で乗車できるユニバーサルデザインタクシーやストレッチャーを使用したまま乗り降りできる福祉タクシーを導入する事業者に対し、従来型のタクシー車両との価格差の二分の一相当額を助成しているところでございます。

公共交通事業者への合理的配慮の理解促進についてでございます。

県ではこれまで、障がい者団体、事業者団体、行政機関など三十八の団体で構成します障害者差別解消支援地域協議会におきまして公共交通事業者の合理的配慮を議題に協議を行いますなど、差別を解消するための取組に関し情報交換等を行ってまいりました。

公共交通機関の利用場面では、点字等バリアフリー情報の発信や乗り降りのサポートといった配慮が必要でございます。県ではこうした合理的配慮を収録した啓発動画でありますとかガイドブックを作成しまして、団体の会員企業等への周知と職員研修の実施をお願いしますとともに、企業などが研修を実施する際に県の専門相談員を講師として派遣をしているところでございます。今後もこうした取組を通じまして、公共交通事業者への啓発に努めてまいります。

坪田

前向きな御答弁をいただきまして感謝申し上げます。一点要望させていただきます。

二〇一三年十二月定例会にて、我が会派の大橋克己議員が、三井三池炭鉱三川鉱の炭じん爆発事故で一酸化炭素中毒により高次脳機能障がいとなった方と御家族のことに関して質問されました。四百五十八名が死亡、八百三十九名もの方が一酸化炭素中毒となった戦後最悪の炭鉱事故から、今年の十一月九日で六十年がたとうとしていますが、今もなお高次脳機能障がいで苦しんでおられる方がいます。個別法の成立に向けた動きは本県にとっても非常に意味のあることになります。どうか当事者やその御家族の方の声に特に耳を傾けていただきますよう要望し、私の質問を終わらせていただきます。

御清聴ありがとうございました。