政策

3つの約束

坪田すすむは以上の目的を掲げ、政治活動を進めています。福祉と少子化対策は、地方自治体の実情に合わせた政策が必須で解決しなければならない課題です。介護業界の人手不足を解消しなければ、近い将来「介護崩壊」が起こりかねません。また少子化についても、給付型奨学金・授業料減免の制度を中間層までに対象を広げるべきです。高等教育の修学支援制度の拡充も進めます。子育て世代が出産の選択をできない社会を変えて行くことも政治の責任です。

  • ふくし政策3つのポイント

    • 介護ビッグバンへの対応
    • 「介護ワークシェアリング」普及後押し
    • 福岡県で介護ワークシェアリングの推進
  • こども政策3つのポイント

    • 超少子化を止める
    • こどもの適正に合わせた教育
    • 英語教育の改革
  • くらし政策3つのポイント

    • 低所得者への生活支援の充実
    • インフラの老朽化対策と公共交通の安全整備

ふくし政策

  • 介護ビッグバンへの対応
  • 「介護ワークシェアリング」普及後押し
  • 福岡県で介護ワークシェアリングの推進

来年に迫る「2025年問題」

団塊の世代が75歳以上になる2025年以降、要介護者が一気に増えるため介護のニーズが急増することが確実です。これは「2025年問題」と言われています。経済産業省の試算によると、介護の人手不足は15年時点で4万人でしたが、25年に43万人、35年に79万人にまで膨らみます。

図は日本全体の人口を100人としてみた時に各世代が何人かを示しています。2040年には、100人中40人が65歳以上で、そのうち20人は75歳以上です。介護が必要な人も11人います。 働く世代50人のうち10人は医療・福祉従事者(必要数)となります。この時までに医療・福祉は全産業のうち最大の割合を占める職業になっています。介護の仕事に就いていなくとも親の介護をしていたりで、介護に縁がない人は少数派になるという日本の将来が見えてきます。これはコロナ前の推計値が元になっているので、出生率が激減した今、この事態は加速することが予測されます。出生率は2015年以降急減しています。

日本の人口を100人とした場合の、年ごとの世代別人口推移を試算した表

人材不足でゆらぐ介護システム

介護の現場で重労働・低賃金がなくならず、離職者が絶えない状況が続いています。2018年時点の有効求人倍率は全職業平均の1.61倍に対し、介護従事者は3.90倍。経済産業省は、介護の人手不足は25年に43万人、35年には79万人にまで膨らむとの試算をしています。このままでは日本は、多くの高齢者が適切な介護を受け入れられない社会になってしまいます。

介護は徐々に「地方の責任」に

以前、要介護1・2のサービスは国の介護保険制度が適用されていましたが、2017年春から実施主体が国から地方に移管されました。介護事業については自治体の裁量が大きくなる流れにあります。具体的には、自治体は「地域支援事業」として、介護予防や要介護者の生活支援を行い、地域の特性に応じた介護全体のシステム作りをしなけらばなりません。医療・介護生活支援を含めた「地域包括ケアシステム」構想を求められています。

現在、要支援1・2のサービスは、地域支援事業の中での「総合事業」と位置付けられています。政府はさらに、要介護1・2についてもこの総合事業に取り組むことを検討中です。業界からの反発は大きく、「保険外し」などとしてSNSなどで取り沙汰されています。2024年度の制度改正に取り入れられるか、年内に結論が出ます。

要介護度ごとの実施主体・保険適用範囲の表

地域の介護事業者が苦境に

地方の政治行政が介護で果たすべき役割は大きくなってきています。しかし、地域の介護の担い手である事業者の苦境が伺える心配な調査結果が明らかになっています。全国の介護サービス事業者の倒産が2022年1~11月で135件となり、すでに過去最多を更新していることがわかりました。このうちデイサービスや訪問介護が8割。背景にはコロナによる利用控えや物価高騰があります。

物価高で光熱費や食費がかさんでも、一般企業のように価格に転嫁できないため、収益が悪化しやすいのです。倒産の多さは、多くの介護事業者が経営を悪化させていることを示唆します。受け皿がすくなくなれが、高齢者の健康悪化や、ケアをする家族の負担増大に直結します。

注目される「介護ワークシェアリング」

介護職は高度な専門性が必要であり業務は極めて複雑と言われています。需要が大きい一方で、いざ働こうと思っても敷居が高い職業となってあり、慢性的な人手不足の要因となっています。人材不足を解消するためには、介護をもって身近な仕事にし、魅力ある選択肢として認知してもらわなければなりません。ここ1、2年で「介護ワークシェアリング」が潜在的介護人材の発掘の「打開策」として注目されるようになっています。

事例1 徳島県、トライアル雇用で実践

徳島県は、社会福祉協議会への委託事業として、「介護ワークシェアリング」に2021年から取り組んでいます。 社会福祉協議会は県内介護事業所から「モデル施設」を公募。モデル施設は「トライアル雇用」として2か月限定で新規職員を採用します。トライアル職員の担当業務は事務、調理、部屋の清掃、利用者の話し相手等です。専門的な業務(入浴介助、食事介助、排泄介助等)には従事しないため、無資格・未経験でも勤務できます。トライアル後もマッチングすれば、そのまま本採用し徐々に専門的な業務にも担当を広げていく、という狙いです。

モデル施設は新規職員を受け入れるため、求人活動、新人研修、事前に担当業務の整理(切り分け)を行なわなければなりません。県から事業者には準備への報酬として最大8万円、研修中の職員の時給半額分が助成されます。2022年は25事業所がモデル施設となり、介護ワークシェアリング」に取り組んでいます。

徳島県福祉人材センターのトライアル雇用募集ポスター

事例2 介護求人マッチングサイト リジョブ

介護業界ではシフト制の勤務(早番・日勤・遅番・夜勤など)が一般的です。1人の担当業務が多岐に渡るので、複雑化しています。一般的な高齢者施設では、新しく入った介護職員が一人で業務を行なうことが出来るようになるまで、およそ3ヶ月はかかるといいます。リジョブが提唱する『介護ワークシェアリング』では、早番・日勤・遅番・夜勤といった「時間」で分けた働き方ではなく、「送迎」「入浴」「食事の配膳・下膳」「清掃」「リネン交換」「口腔ケア」といった業務を塊ごとに細分化し、それを専門的に担うスタッフを雇用することで、今まで一人のスタッフが行なっていた複雑な業務を、複数人でシンプルに行なう、という勤務形態です。これにより、スタッフのプロフェッショナル化を図ることができます。

リジョブでは、新しい介護の働き方を提唱し、自社の求人サイトで事業者と求職者のマッチングを行なっている。他にも類似のサービスがみられ、ワークシェアリングは広がりつつある。

介護事務所とリジョブでの働き方の比較画像
現在の介護事務所の働き方
  • 勤務時間(シフト)単位で1人が複数の業務を実施している。
リジョブで働き方
  • 単一の業務を複数のスタッフで実施
  • ①1人1人の業務時間が短くなる
  • ②業務がシンプルになり、わかりやすくなる
  • 今まで介護業界で働くことを考えていなかった主婦層・学生などが働きやすくなる
  • 介護の担い手が増えることにより、人材不足解消を狙う

「介護ワークシェアリング」普及後押しを

それぞれの自治体が地域の実情に応じて「介護のあり方」を描き、介護を行なう責任主体としての役割を果たさないといけない時代になってきています。大規模な介護の人手不足という難題は自治体最大の課題の1つです。介護は「内なる国防」とも言われます。介護ワークシェアリングを普及させ、業務を広く分散させることは打開策になりえ、福岡県でも早急に実践を始めるべきです。事業者による「業務の切り分け」への理解と準備が必要なので、施策推進のためには、助成などのインセンティブが不可欠と考えられます。

さらに、徳島県施策のような「トライアル雇用」がただちに本採用に結びつかなかったとしても、無駄になりません。一度介護の仕事を経験した人には、将来にわたる選択肢の1つとなります。また、将来親の介護をすることになったり自分が介護される側になった時、研修やトライアルの経験は活かされるし、介護予防の意識付けにもつながります。政策効果は高いと考えられます。

潜在的なトライアル雇用の人材を、①求職中の人、②復帰を目指して休職中の人、③稼ぎたいので休みの日も働きたい人、④学生アルバイト、⑤副業をしたい人、⑥コロナで休業中の人、⑦育児中の主婦、などと設定し、参加しやすいようにきめ細やかに制度設計やPRをすれば、より踏み込んだ対策の実施も可能です。(例えば、失業保険受給期間の合間にトライアルできたり、仕事に復帰するためのステップとして活用してもらったり) 福岡県でも、介護ワークシェアリング(業務切り分け)を推進し、無資格・未経験の人にも門戸を広げていけば、もっと介護が身近な職業になり、人材不足の解消にもつながるのではないでしょうか。

こども政策

  • 超少子化を止める
  • こどもの適正に合わせた教育
  • 英語教育の改革

踏み込んだ子育て・教育負担の軽減へ

幼保無償化が実施され、福岡県では中学生までの医療費が軽減されるようになったが、もう一歩踏み込み、きめ細やかな子育て・教育支援を行うべきです。近年出生者数が急減し、昨年は全国で80万人を割り込みました。子育てにはお金がかかり、子育て世代が出産の選択をできない社会になっています。

現在、住民税非課税世帯などに限られている給付型奨学金・授業料減免の制度を中間層までに対象を広げるべきです。高等教育の修学支援制度の拡充も進めます。また、制度があっても手続きが煩雑な上、周知も不足しているため本来の対象者に支援が届いていません。手続きの簡略化や、自動で対象にするなどの運用面の改善も必要です。

幼稚園・保育園の多機能化、施設数維持

待機児童の解消は進んでいるように見えますが、「隠れ待機児童」という問題がまだ残っています。家庭の都合により、希望の幼稚園がどうしてもあり通わせられない、というケースがあるのです。また、今後は保育所の方が余剰になることが想定されるため、統廃合が進んだ場合に「近くに保育園がない」という事態にならないようにしなければなりません。病児の預かりなど、園を多機能化させることで、施設数の意地が必要です。

全ての子どもたちの安心を守る

貧困や虐待、ヤングケアラーの早期発見と支援が必要です。

子どもの適正に合わせたスポーツ

マルチスポーツの重要性が近年注目されています。日本では従来、同じクラブ・部活に長く所属することが慣習になっています。「一つの道」を極めることは、様々な学びを得ることができ持続力もつくなどメリットがある一方、「別の道」を絶つことでもあると言え、子どもの才能が見落とされるかもしれません。大リーガーの大谷翔平選手が小学校時代に野球だけでなく水泳を習っていたことが関節の柔軟さにつながっているなど、幼少期のマルチスポーツはメリットがあると言われています。

適性を見定める民間の事例

マークイズ福岡ももちにこの秋開業した「アローズジム」は、子どもの「才能の見える化」のサービスを提供しています。最先端の測定記述で運動能力を「見える化」し、「身体的な才能」「スポーツへの適合具合」を明確化します。子ども自身、どんなスポーツが向いているのか、何に挑戦したら活躍できるのかを科学的に把握できます。子どもの適正把握は適切な指導にもつながり、教える側にも教わる側にもメリットがあります。新たな「選択肢」を発見できるかもしれません、才能の発見は、」福岡県タレント発掘事業」など県のスポーツ振興を後押しすることにもつながる。

適性を見定める民間の事例

八村塁
野球
大谷翔平
バドミントン、水泳
錦織圭
サッカー
高梨沙羅
バレエダンス
高木美帆
サッカー
渋野日向子
ソフトボール、軟式野球

子どもに合わせた学習

子どもたちの英語力の地域格差が顕在化しています。都道府県の中で英語の成績が突出しているのが、さいたま市と福井県です。文科省が公表した令和3年度の「英語教育実施状況調査」で中学卒業時に英検3級以上の英語力を持つ生徒の割合で、全国平均(47.0%)を、さいたま市(86.3%)と福井県(85.8%)がはるかに上回りました。ほかに70%以上だった自治体はありません。この地域では、中学・高校で日常の英会話ができる生徒もかなり多いのです。

特定の教科でここまで差が出る例は極めて珍しいことで、学校の英語教育でも教え方次第で実践で使える英語力を身に付けさせることが可能です。国際社会で活躍する人材育成のためにも、福岡県でも同様のカリキュラムを取り入れるべきではないでしょうか。

さいたま市と福井県の例(産経新聞記事引用)

さいたま市では市内の公立小中学校で、9年間一貫した英語カリキュラム「グローバル・スタディ」を実施している。平成28年に導入したこのカリキュラムでは、小1~6の全学年はクラス担任と外国語指導助手(ALT)らの複数担任制を敷き、可能な限り英語の専科教員も配置。早くから”生きた英語”に接する機会を設けている。

結果として、さいたま市の全小学校の5、6年では、「授業の半分以上の時間で児童が英語を話す」ことに割かれていた。近年、小学校段階から「話す英語」に力を入れる自治体が多くなっているものの、全ての小5、6年で「授業の半分以上の時間で生徒が英語を話す」授業を実施していたのは、全国の都道府県、政令指定都市でさいたま市だけ。中学校でも同様の授業の実施率が99.4%とトップだった。

さいたま市教育委員会の担当者によると、授業では児童生徒にできる限り英語によるインプットをするように工夫しているという。その上で、「今後も子供が英語を使うことを嫌がらないような授業を進めていきたい」としている。 福井県は教師の英語力がトップだった。文科省が英語教師の実力を測る指標として調査項目に設けた「英検準1級」(大学中級程度)以上などの取得割合は、福井県の場合、中学で64.8%(全国平均40.8%)。福井県では、英語教師の英検などの取得率や中高での授業での英語使用率の目標を設定して改善を進めてきたほか、英語教師を対象にした研修も熱心に行い、授業の充実を図ってきた。

こども政策

  • 低所得者への生活支援の充実
  • インフラの老朽化対策と公共交通の安全整備

非正規社員、全就労者の3割

低賃金から抜け出せない非正規社員が増加し、格差が拡大しています。賃金が増えないので消費が拡大せず、消費が冷え込んで企業も利益が出ない悪循環になっていると言われています。生活が苦しくなるほど賃金が低い労働者は、実際にはどのくらいいるのでしょうか。日本全体の就労者数は、会社役員まで含めると約6670万人います。その内訳はおおむね、自営業(家族従業員含む)660万人、会社役員300万人、正規社員3600万人、非正規社員2100万人です。

「アンダークラス」の定義

フルタイムで働いているにも関わらず賃金が低い労働者層を、社会学の用語で「アンダークラス」と言います。アンダークラスの定義は、「パート主婦や有期契約の専門職や管理職を除いた非正規雇用労働者」です。2017年就業構造基本調査などによると913万人おり、個人平均年収は186万円で、世帯平均年収は343万円とわずかです。就業者全体を100人としてみた時に「アンダークラス」は15人。多くの人がギリギリの生活をしています。

就業者全体を100人としてみた時の就労者内訳と「アンダークラス」の割合

就業者全体を100人としてみた時には、自営業(家族従業員含む)10人、会社役員5人、正規社員55万人、非正規社員30人となります。

就業者全体を100人としてみた時の就労者内訳と「アンダークラス」の割合のグラフ

広がるフリーランス

非正規労働者は、低賃金、福利厚生がない、キャリア形成が難しい、社内での教育が受けられないなどの点で正規社員に比べて不利です。コロナ禍では、突然解雇され急に生計が立たなくなる人や、住み込みで働いていた人が住む家まで失うケースも相次ぎました。そんな中、急速に広まっているのが企業などに属さず個人で仕事を請け負うフリーランスという働き方です。フリーランスを本業としている人は214万人、副業としている人は248万人で、合計462万人=全就業者の6%はフリーランスという働き方をしています(数値は内閣官房のフリーランス実態調査(2020年2月)より。つまりコロナ前の数値に近い)。

民間の調査ではコロナ禍でさらに増えて2021年には「約860万人」という推測もされています。理由としてはクラウドソーシング(業務マッチングプラットフォーム)の定着、フードデリバリーの業務増、在宅勤務で隙間時間が増えたことなどが考えられます。

最も多い動機は「自分のスタイルで働きたい」

内閣官房による調査では、フリーランスという働き方を選択した理由として最も多かったのが「自分の仕事のスタイルで働きたいため」、次いで「働く時間や場所を自由にするため」でした。育児や介護と仕事を両立させたい、まとめて一気に働きたい、逆に毎日数時間ずつほど働きたいなど、生活に働き方を合わせたいと考えている人が多くなっているとみられます。「収入を増やしたい」という動機を上回っているのは、注目すべきことのように思います。

「収入を増やしたいため」という動機もやはり多く、フリーランスは本人のスキル次第で収入を増やすことができるので、低賃金から抜け出す手段でもあります。

フリーランスという働き方を選択した動機(複数選択可)

内閣官房日本経済再生総合事務局のフリーランス実態調査によると、「自分のスタイルで働きたいため」が最多の57.8%、続いて「働く時間や場所を自由にするため」が39.7%、以降、「収入を増やすため 」が31.7%、「より自分の能力や資格を活かすため」が27.3%、「挑戦したいことややりたいことがあるため」が13.5%、「ワークライフバランスを良くするため」が11.9%という結果が出ています。

フリーランス実態調査結果のグラフ

フリーランス実態調査結果(内閣官房日本経済再生総合事務局)のデータ引用

デジタル分野は成長見通し、単価も高い傾向

現在どの産業においてもDX化が進められており、企業はデジタル関連のスキルや知識を持った人材を求めています。クラウドソーシングでもプログラマーやデザイナーへの発注は多く、比較的高い報酬を得やすい職種となっています。デジタルスキルは年々求められる技術が変わるので、自身が成長し続けなければいけない分野ではありますが、人材の需要は増え続けると見込まれています。

人材の需要

専門業務(原稿作成・コンサルタント・インストラクター・講師・医療)の需要が39.6%と最も高く、事務関連(データ入力・取引文書作成・コールセンター)の需要が19%と続いています。次にデジタル関連(プログラミング・サイト制作・デザイン・カメラマン)の需要が17.4%、現場作業(配達員・整備・清掃・修理)の需要が15.1%、生活関連(美容師・スタイリスト・介護)の需要が9%という結果が出ています。

人材の需要のグラフ

ギグワーカー、コロナ禍で急増

ギグワーカーもフリーランスの働き方の1つです。ネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方を指します。フードデリバリーの配達員のほか、引越し作業、居酒屋の店員、工場のラインなど職種もさまざあります。企業側にとっては需要の増減や事業の展開に応じて柔軟に人材を確保できるなどメリットが多く、今後も普及していくとみられています。人材仲介会社「ランサーズ」が2021年1月に行った推進調査によると、国内のギガワークは少なくとも308万人。2020年の同時期より5倍に増えたとみられています。

制度は未整備

様々な生活事情に合わせることができ、低賃金から抜け出すための手段でもあるフリーランスという働き方はコロナ以後、急速に増えています。しかし労働環境の整備や権利の保護が追いついていません。

雇用に近い場合は、「労働者」とする流れも

フリーランスの働き方は、雇用ではなく個人事業です。一般の労働者を保護するための最低賃金や労働時間規制、労災保険による補償などは適用されませんが、実態としては雇用に近い形で働いているケースも少なくありません。海外では形式上ギグワーカーでも雇用に類似する働き方であれば、通常の労働者と同等の権利を認める例が増えています。米英では、最低賃金、労働時間規制、労災保険による補償を、司法や行政がプラットフォーマー側に求めるケースが続いています。

クラウドソーシング 課題も

ウェブ上で発注者とワーカーのマッチングを行うプラットフォームはクラウドソーシング、仲介事業者などと呼ばれます。内閣官房の実勢調査によると、フリーランスのうち、仲介事業者を利用して仕事を獲得している人は約2割です。

営業にコストをかけなくて良くなるなどのメリットもありますが、課題も多いと指摘されています。例えば、①顧客の不当な要求が放置されていて労働環境が保障されない②プラットフォーマーに依存すると一方的に支配される関係(事実上の下請け業者)になってしまう。③ランキング方式など評価システムが採用されているサイトでは、そのアルゴリズムにより不当な不利益を受けてしまう可能性がある。悪質な場合、プラットフォーマーの「恣意性」が働くケースもあるようです。

自治体が仲介するクラウドソーシングがあってもいいのでは

一般的なクラウドソーシングでは業務委託金額の2~3割が手数料として差し引かれ、発注者と受注者で直接会ったりメールでやり取りしてはいけないなどの制限があります。あくまで業務ごとのマッチングで、2度目以降の再依頼であっても手数料は引かれ続けます。これではビジネスが活性化しませんし、データ打ち込みなど元々の賃金が低い業務だと、最低賃金以下で働かざるを得ない人がいるであろうことが想像されます。

例えば、自治体によるプラットフォームのようなものがあれば、関係法令に基づいた受発注についてのルールを整備したり、手数料を省いたり、地域圏内で事業者やワーカーをつなぐなど、様々な工夫ができるのではないでしょうか。低所得者向け、シングルマザー向けには、逆に支援金を加算するなど生活を支援する仕組み作りもできます。

フリーランスはPC上で完結できる業務も多く、育児や介護など生活の事情に合わせやすい働き方です。少しの後押しがあれば「アンダークラス」を抜け出すことのできる人は多いのではないでしょうか。そうすることで「新しい中間層」を創出することができるはずです。